どうも
元不動産屋のヒロシです。
さて、長崎県長崎市青山町という場所の団地の一部で、私道を所有者が封鎖している事件について、解説したいと思います。
交通料金も徴収しようとしているらしいですね。
通行料が月額1万円、車で通らなければ3000円、高いですよね。
NHKの受信料より高い!
これは、公道に接していない家なら、誰しもに起こり得る可能性のある身近な問題です。
なぜ、私道があるのかというのも不思議な話ですよね。
考えられる経緯から説明していきます。
私道が作られる過程
元々道路の無いところに家が建つとどうしても道路が必要です。
現行の法律では、道路に面していなければ、家が建てられないからです。
でも、そんな都合よく道路があるわけではない土地は、いくらでもあります。
例えば、大きな原野を分譲して、家を建てる時には、不動産屋などが分譲して、道を作ってから、家を建てますね。
そうすると、そういう道は大体が私道になります。
その私道を、分譲して売却した人たちの共有持ち分にすれば、特に問題は起きないのです。
今回の問題では、おそらく分譲して私道を作って売却した時に、私道の持分を設定せず、分譲した不動産会社がそのまま所有権を持たままにしてしまったのが、この問題の始まりなのでしょう。
では、なぜこの分譲するときに作る道は、公道として登記できないのかという点ですが、色々あります。
公道と私道の違い
公道と言っても、何種類かあります。
国が管理する道路なら国道、県が管理すれば県道、市区町村が管理すればそれぞれの道になります。
これらはザックリいうと、それぞれの国や地方自治体が主導して、計画して作る道路です。
家を建てるために作った道路とは、全く性質が違う道路なんです。
ただ、こういう家を建てるために作った道路でも、例外はあります。
例えば、千葉市美浜区でもたくさんありますが、国や地方自治体が分譲した団地などです。
そもそも分譲自体を個人や一般企業がやっているわけではないので、当然それは公道になりますよね。
千葉市美浜区はそのほとんどが埋め立て地で、元々公地ですからね。
ただ、この場合でも、分譲した時に私道として登記し、持ち主たちで持分設定されていれば私道ですが、普通はそんな面倒なことはしません。
実際に、私が売買をした公団分譲の戸建も、接している道路は公道でした。
つまり、元々の土地が公地であれば、そこを他に売り払わずに道を作って家を建てた場合は、ほとんどが公道です。
もちろん公道は、その維持管理も国や地方自治体がやります。
個人や一般企業所有の土地に作った道、維持管理している道は、私道という事です。
登記上では位置指定道路となっている場合もあります。
まあ、実際のところ私道を一言では説明しきれないですね。
私道に取得時効が成立する可能性
この長崎市の場合は、今まで地域住民が何十年も普通に通行していた道路という事なので、十分に可能性はあると思います。
何にしても、裁判所の仮処分とか、判決が必要にはなりますかね。
取得時効とは
所有の意思をもって平穏かつ公然と他人の物を一定期間占有した場合、土地や不動産の所有権を時効によって取得できる制度です。
長期取得時効は20年間、短期取得時効は10年間(※ただし占有開始時に善意かつ無過失であること)、それぞれ所有の意思をもって平穏かつ公然に他人の物を占有した場合に認められます。
この説明だとよく分からないですよね。
例えば、内縁関係の夫婦が住んでいる家で、所有者の方が亡くなってしまった場合を考えましょう。
所有者は内縁の夫で亡くなりました。
内縁の妻はそこに20年以上所有者の男性と住んでいて、内縁の夫が亡くなっても住み続けています。
ただ、そこで相続の問題が発生します。
法律上は遺言書等が無ければ、法定相続人に相続されます。
その場合、法定相続人には内縁の妻というのは入りません。
という事は、内縁の妻の住んでいる家は、法定相続人の持ち物になってしまうという事です。
この法定相続人というのは、内縁の妻にとっては、内縁の夫の親族というだけであって、付き合いのない人たちの場合が多いです。
それを内縁の妻にも所有権を取得できるようにしたのが、この取得時効です。
少し語弊はあるかもしれませんが、大体こんな感じです。
取得時効が成立する可能性
まず、私道を所有する不動産会社というのが、なぜ急にこんなことをやり始めたのかという事に疑問があります。
可能性としては、相続や売買などにより所有者が変わったというのが高いと思います。
例えば、元々その不動産屋でその私道を所有していたとしても、その不動産屋の社長が亡くなって、その会社を受け継いだ人が、これをやっているという可能性もあります。
元々の所有者がやっているとは思えない奇行なので、そういう可能性の方が高いと思います。
嫌がらせに近いですかね。
普通は土地を買って家を建てる場合も、建売で家を買う場合も、しっかりと不動産屋が周辺の土地がどうなっているかを調べて、こうなっていますよ、という「重要事項説明」をしているはずなんです。
という事は、住人の方ももしかしたら、相続などで所有者が変わっているという事も考えられます。
相続の場合は、特にその「重要事項説明」というのですがないので、分からないまま相続するという事は考えられます。
まあ、普通は相続する土地がどこなのかという事は調べますが、周辺道路がどうなっているかまでは、気にしないのかもしれませんね。
意外と、家を建てるのに一定以上の接道が必要だ、というのを知らない人が多いという事です。
そういうことを考えれば、この問題になっている私道の所有者は、今までかなりの年数を放置していることになります。
その間は、通行する地域住民などが維持管理してきたわけなので、取得時効の要件を満たしている可能性は高いです。
とにかく、土地に関しては登記がある以上、裁判をしないことには所有権を主張できません。
私道所有者が私道を閉鎖する真の理由
報道では、交通事故の責任問題や、維持管理にお金がかかるとか、いろいろ言っています。
そんなのは法律上の建前にすぎません。
これはただ単に嫌がらせです。
不動産業者もこれをやる事によって、裁判に持ち込み和解金をもらおうという、せこいことを考えているのだと思います。
あくまでも私の予想です。
そうしないと、固定資産税がかからずとも、こんな土地を持っていても一銭の得にはなりません。
それを利益化するためにやっていることだと思います。
行政に寄付するにしても、拒否されることはおそらく初めからわかっていたはずなので、その先で、住民からお金を取ることを目的としてやっていることは明白です。
買い上げ交渉して、ダメなら通行料を払わせる。
それも駄目なら実力行使をして嫌がらせをする。
よくドラマやアニメなどでよく見る、悪徳不動産業者のする常套手段ですよね。
こんなことを司法は許してはいけないと思います。
まとめ
私道の場合はしっかりと地域住民の間で、所有者が誰なのかを認識しておかないといけないのかもしれませんね。
とは言っても、相続したりしているとなかなか難しいですよね。
とにかく、優秀な弁護士を付けて、この私道の所有者と戦うしか方法はありません。
もしかしたら、行政でもやってくれることはあるかもしれませんし、とりあえず裁判所で通行止め解除の仮処分を出してもらって、争う事になるのでしょう。
かなり住民にとっては面倒な裁判になることは確かですが、頑張ってください。
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